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それはあまりに突然だった。
皇成にぐちゃぐちゃにされて、涙まで流した俺を辱しめたのに……
「 留守にするって、どこか行くんですか?」
「 パリに、写真撮りに行ってくる 」
「 パリ…… 」
「 憂、待ってて 」
何言ってんだ……
待っててって何だよ。
俺は別にあんたの特別じゃないだろ?
「 俺を… からかったんだろ、男だからって遊んだのかよっ 」
「 憂、違うっ 」
怒ってんのか、俺…… なんで?
「 パリは前から決まってた事で…… 」
「 だから! そんなの俺には関係ないからっ 俺にあんたを刷り込んで自分はパリかよっ 」
まるで、俺が捨てられるみたいじゃないか!
「 憂、聞けっ 」
「 嫌だっ!! 」
俺は… わかってるんだ。
郁也ん家の浴室で会って、俺は男なのに惹かれたんだ。
強引で優しい手の皇成さんに……
なのに行くなんて……
許せないっ
「 俺はあんたの特別じゃないから待たない!」
は…… あれ、違うだろ……
俺はあんたの特別じゃない、そうじゃなくて、あんたにとって俺は特別じゃない……
そう言いたかったのに。
「 俺には特別だ、だから抱いた… 俺を忘れないように、離れていかないように 」
あ…… ダメだ。
きっと俺は皇成さんに敵わない。
俺の中にもう、この人がいるんだ……
「 憂、待ってて 」
「 ん… 待つって… んっ… どれくらい?」
この人の唇は俺をいい子にしてしまう。
「 まぁ 1年、くらい?」
「 はあっ!? ふざけんなっ!!」
怒り心頭で何が悪い?
俺はこの人に騙された気分のまま置いていかれた。
この日、また抱かれてキスマークまでつけられて怒って……
皇成さんはパリに行ってしまった。
本当に1年で帰ってくるかは未定だ。
結局、俺は待つだけになった。
それでも、皇成を待ちわびる自分がいる。
「 あと、半年… 」
耳を済ませば聞こえそうだ、俺を呼ぶ声が……
“ 憂 ”
早く、帰ってこればいいのに……俺を抱きしめるくらい、許してやる。
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