女帝

2/3
前へ
/15ページ
次へ
 「そう来ると思ったよ。いじめ問題はね、家庭、学校、警察、政治が成熟するまでは、大人の組織的児童虐待だ。  由衣がヒーローだったら解決する話じゃない。幸助君はあずかるよ」  桜の木が一斉に花をつけて、しゃっくりした  ――いや、大きくなった。  伸びたのは1メートルほどだが、花魁と幸助を乗せてるいので、上に進むというより、右にしなる。  洋子が驚いていると、桜はまたしゃっくりでもするかのように、1メートル成長した。  今度は左にしなる。  次は空に向かって爆発的に伸び始めた。  洋子はもう幸助の姿を確認できない。  桜は床を唸らせながら、どんどん太くなり、まぶしくなり、  最後に洋子の前で竜巻のように旋回する黄金の昇竜になった。  リビングは光の洪水。  洋子は片方の袖で顔を覆った。  光の洪水が引いて行ったあと、彼女は腕を下ろして目を上げた。  ぱたんと音がして一階と二階の天井が閉まった。  洋子はあっけに取られて言葉をなくす。  自宅は元の形に戻っていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加