女帝

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 幸助は絨毯になってしまった。  男性の花魁はもう着物姿ではなく、幸助を連れて、制服姿でジョーカーと呼ばれる自宅にいた。  本人は神田美咲と名乗っていた。  美咲は幸助にかかっていた膜をペロンとはがすと、幸助を丁寧にたたんだ。  そして洗剤と水のはったたらいに入れ、じゃぶじゃぶ洗った。  幸助は最初気持ちよかったが、だんだんお肌がピリピリしてきた。  美咲は中庭で幸助を干した。  幸助は一日では乾かないため、夕方、取り込まれて中干をされ、翌日の天日干しでからからに乾いた。  美咲は昼下がりに幸助を取り込みにやってきて、ジョーカー本部の和室でしまおうとした時に、誰かに叱られていた。  「洗っちゃ駄目なんだよ」  「そうなのか?」  「干してブラッシング!」  美咲は幸助がいつか会った崎守仁志と向かい合って正座し、小さくなっていた。  制服姿の仁志は天使のような容姿をしていたが、美咲に注意してると若手の僧侶にも見えた。  幸助は絨毯をやめて少年になると、美咲に付き合ってそばに正座していた。  美咲の愛情はわかったが、変なクリーニングをされてよれよれになっていた。  加えて、仁志の隣に着物姿の若い女性が生真面目な顔でちょこんと座っていた。  お肌はツヤツヤで、長い髪を後頭部できれいにまとめた紀ノ川由衣教師だった。    こちらは花魁ではなく、昔の女性が仲間同士でとっておきのあんみつ屋に出かける時のような格好だ。  仁志が絨毯をクリーニングするとこうなるらしい。
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