エピローグ

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 視聴者から反感を買っているのに、同じようなメディアは続いた。  東京在住の30代若手の実力派記者、朝倉美乃梨が立ち上がる。  女優のような容姿はしていなかったが、彼女は顔だけのTV花形とは違う生き方をしていた。  彼女は報道部、および芸術部を使って悪辣に被害者親を叩いているジョーカー、横浜本部に取材を試みた。  手続きを取って約束の金曜朝になる。  美乃梨を迎えたジョーカー幹部女性は細身の40代で落ち着いていた。  彼らが何か理論武装して来るようだったら、美乃梨は抜き打ちの突撃取材にも出るつもりでいた。  「どうして傷ついた人を、更に追い詰めるのですか」  「最初の犠牲が必要なのです。報道しなかったら、親たちは伝統的に子供に通学を強要します。  後で理由を聞くと、子供の言うことだから、犯罪かどうかわからなかったと言い逃れます。  これでは子供はいじめ相談ができません」  「やることが急進的すぎませんか」  「言ってる間に子供が死にますから」  同じころ、浜中栗夫は山倉小学校の下を通りかかり、上から降ってきた絨毯をキャッチした。  栗夫はそれを自宅に持って帰り、汚れを除去してから干してブラッシングした。  絨毯は9歳の少女になった。  栗夫は尋ねた。  「僕は浜中栗夫。君のお名前は」  「相田由真」  「おうちへ帰りたいかい?」  由真は首を横に振った。  「なら、帰らなくていいよ」    栗夫は電話で職場の知り合いの女性、北町春香に助けを求めた。  彼女は若かったが、実家に弟妹がたくさんいるのが有名で、子供に関しては熟練だった。  栗夫はジョーカー本部に少女を預かっていることを連絡した。  その後、春香は由真の世話を手伝うため、栗夫の自宅に一泊してくれた。  翌日ジョーカー本部から由真の迎えがやってきた。  仁志と優しそうな女性だった。  女性が由真と春香の相手をしている間、仁志は栗夫にパステルオレンジのラッピングをされた箱を渡した。  栗夫はうろたえる。  「何だ、攻撃か」  「一級の和牛。ありがとう」  仁志は無表情だった。  栗夫はぶきっちょだった。  一月後、二人は一緒に泣ける映画を見に行って、揃って大号泣する。  めでたく友達になっていた。    翌週、仁志は職場で朝っぱらからゴテゴテに装飾されたローブを渡されて、同僚に言った。  「おれ、衣装要らないんだけど」  「駄目だ。形から入らないと」  衣装を制作した美咲が子供のように言い張る。    美咲はアニメ大好きなコスプレ屋さん。  普通に武装する時もあるが、役者をやったり、舞台装置考えたりして、芸術を武器のように操る。  ジョーカーには医療、報道、芸術方面の人材が多数所属している。 (終わり)
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