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幸助
幸助は平日の午後1時半、横浜市兼沢区を通過する私鉄、迷宮線、兼沢文虎駅西口バスターミナル近くのスーパー、ハトムギにいた。
早い時間に学校を抜け出せるのは、家庭での安全が約束された子供だけだ。
子供がいなければ、常習犯でない限り、学校は親に連絡をする。
このため、幸助は授業をふけたことは一回もなかった。
夜中まで寄り道して自宅に帰ったこともない。
幸助は大人が気に食わないことができる身分ではなかった。
しかし、今日の学校は午後休み。
県の中学生の大規模テストのために校舎を空けたのだ。
一科目だけの特殊テストのため、午前午後のぶち抜きにはならなかった。
幸助の母親はテストの存在は知っていたが、それが今日であること、幸助の学校が舞台の一つであることを知らない。
だから幸助は自宅に帰らず、息抜きをしていた。
午後2時半、幸助はハトムギの屋上にいた。
ハトムギは、普段、通常の大型建物と同じに厳重管理されていて屋上に出られる客はいない。
でも今日は違った。
ハトムギ文虎支店は現在改装工事中で、幸助は立ち入り禁止区域に迷い込んだ。
咎める者はなく、幸助も危ない場所に行く気はなかったのだが、天使が呼んでるみたいに屋上に出てしまった。
幸助は人を呼ぼうとしたがやめた。
問題を起こせば親が呼び出される。
幸助は学校でクラスメートたちに、連日自殺の練習をさせられていた。
今日天使が呼ぶならそっちにいこうかと思った。
幸助は屋上から地上の街並みを見渡したあと、空に向かってポーンと飛んだ。
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