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洋子と幸助
幸助の自宅は母、洋子の実家で、彼女の実父、実母も住んでいるので少し大きめだ。
幸助は帰宅後の日課で、アルコール依存の祖父、発達障害の祖母から逃げ回った。
洋子が趣味のお稽古から帰ると、リビングで打ち明けた。
「学校行きたくない」
「何があったの」
幸助は黙った。
外の雨は怒り狂って窓をガタガタ揺さぶっている。
吹きあれる風の金切り声。
幸助は逃げたら槍のような雨とイカズチに殺されることを知っていた。
洋子は各部屋の隅に常備しているバットを取った。
「言えよ、この〇タ」
「言いたくない」
「うぉぉぉぉぉ! 吐け吐け! 不安定になるじゃないか」
洋子が幸助をバットで殴打した。
幸助は答えた。
「いじめに遭ってるんだ」
「加害者は誰だ」
「平山優香」
「女にやられてんのか。あんたが悪いんだよ」
洋子は子連れで離婚後、実家にパラサイトし、働かずにお稽古、浪費、美容に明け暮れていた。
離婚裁判では幸助が大学生になった時、父親が養育費を払うことになったらしい。
しかし、洋子は『そんなお金要らないわよね』と幸助に確認して、同時に幸助から養育費を受け取る権利をはく奪した。
彼女は母子家庭と称して、神奈川県と横浜市、両方からほぼ同じ援助を受け、どちらにも気づかせない話術と交渉の天才である。
しかし、天才的だったのは暴力もだった。
幸助は謝った。
「ごめんなさい」
「それじゃ解決にならないって言ってるの」
「どうしたらいいの」
「考えろ、○タ」
洋子は幸助をたっぷり拷問したあと、スマホを取った。幸助は慌てた。
「お母さん、何するの」
「学校に連絡するんだ」
幸助が悲鳴を上げる。
「やめてよ、殺されるよ」
「あんたが殺されるかどうかは私が考えるんだ、○タ」
洋子は担任の紀ノ川由衣に文句をつけた
「教師が悪いんでしょお! この給料泥棒、対処しやがれ」
洋子はスマホを切った。
「ほら解決してあげた。明日も学校行きなさいね」
「いやだ」
洋子はバットで幸助を殴った。
幸助が翌日、雨上がりの学校に行くと、担任の紀ノ川は緊急クラス会を開いて、幸助の加害者を糾弾した。
幸助は放課後、加害者の報復を受け、バットでボコボコに殴られた。
でも膜があったので何をされても痛くなかった。
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