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 紀ノ川由衣は横浜市兼沢区、山倉小学校の20代若手国語教師。  去年の夏、地元横浜山下公園で巨大宇治金時かき氷を食べていたら、大口開けている時の変なショットを観光客に取られた。  観光客は彼女に向かってヤマトナデシコと連呼して喜んでいた。  学校のクラス編成は二年ごとで、由衣が担任を兼任していたクラスは、今年は四年に上がった。  彼女は自分の担当するクラスのボス猿、平山優香たちのいじめを見て見ぬふりしていた。  時期は4月中旬で新学期の直後。  宮間幸助の去年からのいじめ被害は山倉小学校教員全部が知るところだった。  このことを問題にする者はいない。  ――しかし教師が全員性悪で、あるいは教頭や校長に逆らえず、あるいは教育機関の旧体制に問題があるからそうなるわけではない。  由衣は学校が実施したアンケートをクラスで回収し、確認するため自宅に持ち帰った。  その時、宮間幸助がいじめ被害を訴える記述をしていることに気がついた。  由衣は問題のアンケート用紙をあっさりシュレッダーにかけた。  足りない幸助のアンケート用紙については捏造し、翌日、担任の確認済みとして、クラスアンケートを学校に提出した。
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