真相の夜――ソファーにて

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 俺はさっきヤツに面と向かって、「病気じゃないのか?」とは問えなかった。  もちろん、ヤツのためを思ってだったが、それ以上に、自分が引導を渡してしまうが怖かった。 そのくせ、ヤツが自分自身で、「病気かも?」と口にした途端に、うろたえた。  一度きちんと専門機関、つまり病院で診てもらった方が絶対にいい!と思っているというのに――。  月橋は涙声で、なおも続ける。 「だって・・・・・・変だ。おかしいんだ」 「だから、何が変なんだよ‼俺にも分かるように説明してみろよ!」  いい加減、俺も、すでに分かっているという原因を話そうとしないにヤツに、苛立ちを覚えてきた。 ヤツ本人にとっては言葉にすることすら、怖いのかも知れない。  しかし、ヤツが話してくれない限りは、俺は全く分からないままだった。 ――俺は月橋のためにだったら、出来ることは何でもするつもりだった。 出来ないことだって何とかしよう、何とかしてやる!と思った。  ヤツはやっと顔を上げ、俺を見た。 さすがに、泣き出してはいなかった。  しかし、黒目がちな目は潤み、さらに大きくなったように見えた。 今にも(たた)えた涙ごと、こぼれ落ちてしまいそうだと思った。  ヤツはその目を顔を、俺へと向けた。 そして、そのままで言葉を探しさがし、話し始めた。 「ここ一月ばかり、眠れないんだよ。――いや、眠ってはいるんだと思う。夢を見てるから。それで、目が覚める。そんなことが一晩に二回も三回もあって、結局、寝た気がしない。それでつい昼間、ウトウトしてしまうんだと思う」 「・・・・・・」  俺はヤツに、「説明してみろ!」と怒鳴ったばかりだったくせに、とっさに気の利いた言葉ひとつも返せなかった。 俺が思っていた以上にずっと、月橋が置かれている状況は深刻なようだった。
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