808人が本棚に入れています
本棚に追加
瞬間、俺は閃いた。
そして、考える前にその閃きをそのまま、ヤツへと投げ掛けていた。
「その、見てる夢ってもしかして――、俺と寝てる夢なのか?」
ヤツが言ったように、「ヤる」とか「セックスをする」とかを、とっさに言わなかった自分を、俺は褒めてやりたかった。
――いや、ただ、認めたくなかっただけだったのかも知れない。
しかし、
「⁉」
絶句したヤツの顔が、表情自体が、俺にとっては返された答えそのものだった。
なるほど、そういうことか。と、かえってうなずけた。
――やっと、さっきの月橋の爆弾発言の意味が分かった。
図星を指された月橋は、実に分かりやすかった。
とうとう、その大きな目から涙がこぼれ落ち、目尻から頬へと筋を描いた。
「ごめん――」
ヤツはそう一言、つぶやいた。
俺の聞き間違いだと思ったが、ヤツはもう一度、
「ごめん、野宮。ゆるしてくれ」
と、ハッキリと言った。
ダメ押し、とどめ、――決定打だった。
ヤツが何を言いたいのかは、その一言で俺には分かった。
分かったが、全く納得出来なかった。
俺は、今にも叫び出しそうなヤツへの『想い』とやらを、なだめすかせるのに必死になった。
だから自然と、ヤツへと問う声が低くなった。
「ナゼ、謝るんだ?月橋」
「え・・・・・・?」
ヤツは俺の言葉に納得するどころか、まるで分かっていないようだった。
俺も又、ヤツに繰り返して言った。
「だから、ナゼ、謝るんだ?って聞いてるんだ」
最初のコメントを投稿しよう!