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分かるまで、何回でも言ってやる!と思った。
声は低いわ真顔だわで、ヤツの目に俺は、ほとんど怒っているようにしか見えなかっただろう。
月橋の上半身は、ラブシートという名のソファーの端ギリギリから、完全にはみ出ていた。
上体を反りながら、ヤツはポツリポツリと話し始める。
「何故って――。だって、気持ちが悪いだろ?男のおれに、そんな夢見られて」
「気持ちが悪かったのか?」
「え?」
「おまえは、俺と寝る夢見て、気持ちが悪いって思ったのか?そう感じたのか?」
「・・・・・・」
月橋はうつむいた。
固く引き結んだ口元は、チョットやそっとではほどけそうになかった。
しかし、俺はあきらめなかった。
「月橋、答えろ」
丸っきり、好奇心がなかったとは言わない。
――言わないが、けしてそれだけではなかった。
ヤツが、「気持ちが悪かった」ようなことを少しでも言ったら、俺はすっぱりキッパリと、ヤツへの『想い』を絶ち切ろうと思った。
そして、今夜この時のことは、まるでなかったことにしようと思った。
同期で同僚で、飲み仲間で、――見せかけだけの友人であり続けようと、そう心に決めた。
長いながい間があったように俺には思えたが、実際は、一分も経っていなかっただろう。
月橋はうつむいたままで、言った。
「いや、気持ち悪くなかった。――すごく、気持ちよかった」
「だったら――っ!」
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