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ナゼ、謝るんだよ⁉と、俺が叫ぶ前に、ヤツがそうした。
顔を上げて、俺を見て叫び出した。
「だからだよ‼だからなんだよ!こんな夢、見ちゃいけないだろ⁉」
「どうしてだ!?」
俺は思わずヤツの両肩を、力加減なく掴んでいた。
驚きや戸惑い、その他色いろな感情で、月橋は今、グラグラと揺れ動いている。
それが薄いワイシャツ越しに、手のひらへと伝わってきた。
黒いくろい目を泳がせて、ヤツがしどろもどろの反論を試みてくる。
「どうしてって――、それは、おまえが――」
俺はそれを、ピシャリとはね付けた。
「俺が一体、何だっていうんだよ!おまえに、俺のナニが分かるっていうんだ⁉」
「野宮っっ⁉」
どの道、――もう限界だった。
さっきから、ラブシートというよりはバトルシートと呼んだ方が相応しいだろう遣り取りを飽きもせずに、このソファーの上でヤツと続けてきた。
いい加減、叫び続けた喉も、ヘンにねじった体勢にも疲れてきた。
いくら、『のんびりステイプラン・12時までチェックアウト延長可』にしたからといって、ヤツと一晩中延えんと、怒鳴り合う気など俺にはない。
鳴き続けるなら、黙らせてしまえ、ホトトギス。
字余り。
俺は、月橋の体を抱きしめた。
そして、自分でも一番正直だと思う体の箇所を、ヤツのソコへと押し付けた。
思った通り、ピタッと鳴き止むヤツへと、俺は言う。
「――俺のは文字通り、愚息だからな。聞き分けがよくないんだよ」
「え・・・・・・?」
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