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やっと、一文字だけをつぶやいたヤツの耳へと、俺はささやき掛ける。
「――もし、おまえが病気だったら」
「・・・・・・」
俺の体とラブシートとに挟まれて、ヤツの体は完全に動きを失っている。
ヤツが顔を背けているのをいいことに、俺はほとんど耳をかじる勢いで続けた。
「男と一緒にラブホに来て、ラブシートに仲良く座って、おまえとヤる夢を見た。気持ちよかった。だなんて告白されて、ナニをおっ勃ててる俺も又、十二分病気だよな?」
言い終えた俺は腰を使い、さらにグリグリグイグイと押し付けた。
「それは違っ――!あっ‼」
ヤツが俺の肩に手を掛け、指を立てた。
痛いくらいに力が込められていたが、俺を突き飛ばそうとはしなかった。
――むしろ引き寄せられていると、俺は勝手にそう思った。
その証拠に、ヤツのソコも勃ち上がりつつあった。
嫌だったら、いくら直接的な刺激に弱いとはいえ、こうもスグには反応しないだろう。
意外と人見知りをする、シャイなムスコさんたちなのだ――。
俺はヤツの頬に触れながら、促した。
「ナニが違うんだよ?」
「野宮は病気なんかじゃない‼」
自分ことではないのに、必死に言い募ってくるヤツはカワイイ。
――本当に、カワイイ。
うっかりデレそうになる顔を、俺は精ぜい引き締めた。
一言ひとことをヤツへと、そして俺自身へと言い聞かせるように、発する。
「俺もそう思う。健康な証だ。じゃあ、おまえだってそうだろう?病気なんかじゃ、けしてない」
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