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コクンと素直にうなずく姿が仕草が又、堪らなかった。
俺は表情が緩まない内に、矢継ぎ早に言葉を繰り出した。
「好きな相手と一緒に居るなら、そうなるのは当たり前だ。――月橋、好きだ。俺も、おまえと寝たい。ヤリたい」
「え?噓だ・・・・・・あっっ‼」
ヤツは反射的に「嘘」と言ったのかも知れないが、俺はムキになった。
「これでもまだウソだと思うのか⁉え?いい加減、分かれよ‼」
電マも真っ青な俺の腰遣いにシビれたのか、月橋の指先からは次第に、力が抜けていった。
口元は荒い息で無理矢理、半分ほどにこじ開けられている。
ヤツのその唇の赤さに、俺の目は釘付けになった。
――瞬間、口付けていた。
思っていたよりもずっとずっと柔らかくて、しかも弾力があるヤツの唇を、俺は夢中で貪った。
期待をしないで行った焼き鳥屋のハツの塩焼きが、思い掛けない美味しさで、あっという間に二串をペロリと平らげた時のようだった。
絡め取り、ヤツからもかめら返された舌は、レバ刺しのようだった。
俺の舌の上で、今にも蕩け出してしまいそうだった――。
頭の中では焼き鳥屋が浮かびつつも、やっとラブシートの名に相応しい行為に耽っていると、月橋が俺の体の下で身じろぎをした。
「野宮・・・・・・」
キスの隙を突いて、俺のことを呼ぶ。
俺はヤツには十年近く、ずっとそう、――名字で呼ばれていた。
今夜、いま初めて聞く声の調子にドキッとした。
俺の耳には、キスで濡れにぬれているように聞こえた。
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