解決の夜――ベッドにて

2/9
802人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
 俺は続けて、言った。 「起きてたら、そのままでいい。聞いてくれ。――おまえ、俺と寝ようとしてるのは、もう夢を見たくないからじゃないのか?」 「⁉」  また、ヤツの肩が、いや今度は体全体がビクリ!と震えた。 俺は、なおも続けた。 それが、俺がシャワーを浴びながらバスルームで打ち立てた、『仮説』だった。 「もしも、夢が現実になったら、もう見なくなる。そうしたら、グッスリと眠ることが出来る。そのためにも、俺と――」 「違う‼」  月橋が、振り返った。 勢い余って、掛け布団はものの見事に吹っ飛んだ。  『フトンが吹っ飛んだ!』というベタもベタなギャグを思い浮かべて、俺は目の前の現実、――月橋の全裸から目を逸らそうとした。 しかし無駄で、無理だった。  俺がかろうじて出来たのは、ヤツの体ではなく目を、その、黒目がちな大きな目を見つめることだけだった。 それでも、首から下、鎖骨の辺りまでは見える。 ――つい見てしまう、自分が嫌だった。  月橋はそのままで、言い募ってくる。 黒いくろい大きな目で、すがり付いてくる。 「違う、――ちがうんだ。野宮」 「何が、どう、違うんだ?」  そう断言するからには、――きちんと説明をしてほしかった。 俺の『仮説』を、根本から覆してほしかった。  ちゃんと、友人としての線引きを設けてほしかった。 俺のいやらしい期待など、完膚なきまでに叩きのめしてほしかった――。  こんなことがあってもなお、俺は月橋とずっと付き合っていきたいと思っていた。 例え、どんな形であっても。 そう、実にあきらめが悪いことに。 「それは・・・・・・」  うつむき、言葉を探し続けるヤツには、布団がはだけ切っていることなど、どうでもいいようだった。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!