第一滴・―冷気―

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 馬鹿な男だと思う。  生理的欲求もなく、ただ箱の中に閉じ込められて、何もする事がないというのに、本当に、気狂いしないとでも思っているのだろうか。  これは復讐だ。  私の事を蔑み、冷たくあしらい、遂には無視を始めたあの男への復讐だ。  今頃あいつは快適に過ごせている筈だ。  空調は私が完璧に管理している。  食事も、生理的欲求も、全て私が満たしてあげているのだ。  あの男は気付いていないだけ。  否、知らないだけ。  何て滑稽なのだろうか。あの男は自分の力で生きているようでいて、実は私の介助によって生かされているのだ。  毎日毎日、丁寧に扱ってやる。  もう、私の事を忘れたとか、知らないとか、自分の力でここまできたのだとか、そんな戯れ言は口にさせない。  一体、あの男が快適に過ごせるようにするため、いくらつぎ込んでいると思っているの?  だけど、それもこれも全て復讐のためだから。いつかあの男が気付いた時に暴露して、私が離れていった時に後悔しても遅いのだ。  あの男には是非、そうなる前に、自分の力で真相に近付いてもらいたいものだ。  そのための準備は進めている。  もうすぐそれが完了するのだ。  もしそうなった時に、あの男の驚き慌てふためく様を、笑って見てやろうと思う。
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