第二滴・―堕ちる―

6/7
前へ
/10ページ
次へ
「あら、帰ってきたの?」 「えぇ。そうなの。やっとね」 「本当に可愛いわねぇ。教室に通っている間、寂しかったんじゃない?」 「えぇ。とても。でも、私も世話をしに通っていたし、ずっと逢えなかった訳じゃないのよ」 「そうなの。それで、上手くいったのかしら?」 「先生は、そう仰ってらしたわ。とても賢い仔だったと、笑ってらした。私も思わず自慢しちゃった」 「あらあら。まぁでも、お顔もこんなに可愛らしくて、賢そうだものね。分かるわぁ」 「ふふふ。私の自慢の仔よ。これから一緒に暮らすの。絶対可愛がるわ。甘やかし過ぎない程度にね」 「そうね。甘やかし過ぎたら、折角お金をかけて、教室に預けた意味がなくなるものね」 「そう。まずはきちんとしなきゃ、外でも他の人から可愛がられるように、そうしないと」 「分かるわ。いくら可愛い仔でも、家族以外の人に吠えたり、唸ったり、噛んだりしてはいけないものね」 「嫌われたらお仕舞いよ」 「下手をすれば、通報される時代だものねぇ。気を付けないと」 「そうね。怖いわね」 「怖い時代よ」 「すやすや眠ってる。本当に愛らしい仔ね」 「貴女も飼ってみたら? 凄く癒しになるわよ」  そう、近所の人と世間話を交わしてから自宅に入る。  いよいよだ。  これから、二人の生活が始まろうとしている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加