2018年6月12日

1/5
前へ
/32ページ
次へ

2018年6月12日

風が、熱気と湿り気を含んでいる。 自転車を漕ぎながら、河川敷の風景を眺める。親子だろうか、川で釣りをしているのが見えた。 「きれいだねぇ。」 いつもと変わらない日常が、そこにはあった。 「おい咲夜、今朝のニュース見たか?」 「んん?どのニュースだ?」 「決まってんだろ、変死体のニュースだよ。」 大学のカフェテリアで食事をしていると、ダイキチが話しかけてきた。 「あぁ、日本橋の近くで見つかった、首なし死体のことか。」 最近、江戸界隈では、変死体のニュースがよく上がる。 「そう、それ!俺の言った通りだろ。」 「…あんまり不謹慎なことは言うもんじゃないぞ。」 変死体は今日のニュースで6人目。ひと月前に、左脚が無くなった死体が見つかり、右脚、左腕、右腕、胴体と順に無くなった死体が見つかった。ダイキチは「次は首がなくなる!」と、誰も聞いていないのに持論を皆に触れ回っていた。 「犯人は同一犯かなー。なぁ、咲夜。今日帰りに日本橋に行ってみようぜ。なんか手掛かりが見つかるかも。」 「手がかりって…お前何考えてんだよ。」 「決まってんだろ、犯人を激写してSNSに投稿するんだよ。そしたらめっちゃ有名になれるじゃん。」 「お前なぁ…。」 行く気なんてまったくなかったのだが、晩飯をおごると言われては、ついて行くしかないだろう。 そして、俺は後悔することになる。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加