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2018年6月12日
風が、熱気と湿り気を含んでいる。
自転車を漕ぎながら、河川敷の風景を眺める。親子だろうか、川で釣りをしているのが見えた。
「きれいだねぇ。」
いつもと変わらない日常が、そこにはあった。
「おい咲夜、今朝のニュース見たか?」
「んん?どのニュースだ?」
「決まってんだろ、変死体のニュースだよ。」
大学のカフェテリアで食事をしていると、ダイキチが話しかけてきた。
「あぁ、日本橋の近くで見つかった、首なし死体のことか。」
最近、江戸界隈では、変死体のニュースがよく上がる。
「そう、それ!俺の言った通りだろ。」
「…あんまり不謹慎なことは言うもんじゃないぞ。」
変死体は今日のニュースで6人目。ひと月前に、左脚が無くなった死体が見つかり、右脚、左腕、右腕、胴体と順に無くなった死体が見つかった。ダイキチは「次は首がなくなる!」と、誰も聞いていないのに持論を皆に触れ回っていた。
「犯人は同一犯かなー。なぁ、咲夜。今日帰りに日本橋に行ってみようぜ。なんか手掛かりが見つかるかも。」
「手がかりって…お前何考えてんだよ。」
「決まってんだろ、犯人を激写してSNSに投稿するんだよ。そしたらめっちゃ有名になれるじゃん。」
「お前なぁ…。」
行く気なんてまったくなかったのだが、晩飯をおごると言われては、ついて行くしかないだろう。
そして、俺は後悔することになる。
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