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「なんで、そうなるの?」
「なんでって、お前の話がそういう流れだったじゃん」
ああ、なんかオレいまカッコ悪いこと言ってる気がする。がじがじ、ストローを噛んだ。ストローを噛むやつは嫌いだ。ってことはオレはいまオレが嫌いだ。
「てか、別に原田先輩に映画見に行こうとか言ってないよ?嫌いかどうか聞いただけ」
歩美はポテトをつまんだ。よく見ると最後の一本だった。
「お前、ほんとにわかってねーな」
「なにが?」
「別に」
食べ物を食べ尽くし、飲み物を飲み干したので、帰る支度をしようと立ち上がる。歩美がトレイを持つ前にオレが持ち上げ、ゴミを捨ててトレイを返却した。そのままスタスタ歩いて、店を出る。待ってよぅと後ろから声があがったので、振り返った。
「お前がなに考えてたは知らんけど、オレ、お前と映画行く気だったから」
振り向きざま、カバンから封筒を取り出す。
「これって…」
映画の前売り。ちなみに1300円かける2である。
「そんなに映画好きなら、おまえら2人で行けばいいんじゃん」
もうなんかこれ以上喋るとどんどんカッコ悪くなる一方なので、このまま帰ってしまおうと思い、オレは歩きだそうとした。そのとき、歩美はにっこりと、笑った。
「じゃあ、今度の日曜、朝10時に駅で!」
「は?」
お前オレの話聞いてた?呆気にとられて、オレは尋ねる。すると歩美は満面の笑みのまま、頷いた。
「先輩は私と映画行く気だったって」
じゃあ先輩また明日部活で!オレが何かを言いかける前に、歩美は走り出してしまった。
「あ、待てよ歩美…!」
伸ばした手のひらは、空を切る。そしてすぐに歩美は曲がり角を曲がり、あっという間に見えなくなった。くそ、あいつただのマネージャーのくせに、なんであんなに足が速いんだ?…じゃなくて。
「…オレ、ダセ―な…」
はああ、とため息を吐く。気分的には、この場にへたへたと座り込んでしまいたい感じだ。やらないけど。
ああ、このカッコ悪さはきっと、大谷の所為だ。絶対明日一発殴ってやる。よくわからないがとりあえずいまは、そう思うことにしておこう。
<映画好き?fin>
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