デート?

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デート?

部活は朝6時から始まる。休日も平日も同様である。しがない野球部。甲子園を目指すなんて大それたことは口に出してみようともしたことがない、地区予選1回戦負け常連校だ。しかしだからといって、練習をしないわけではない。基本的にオレらは、ただただ野球が好きなんである。勝つとか上の大会に進むとかそういうんじゃなくて(もちろん勝てたらうれしいけど)、ただ野球好きの仲間が集まって野球できりゃあいい、そういう部活だ。勝とうが負けようが早々に先輩が引退しようが、やっぱり朝6時から部活は始まる。 「チーっす」 テキトーに挨拶しながらグランドに足を踏み入れたら、目の前に歩美がいた。 「ゲッ」 昨日の今日なので若干気まずい。というよりなぜマネージャーがこんなにも早くグランドにいるのか。今日はなるべく歩美に会わないようにしようと思っていたのに。 「原田先ぱぁい。おはよーございます」 にやにやしたような顔で、歩美はオレに近づいた。 「昨日の約束、覚えてますよね?」 まさにその話をしたくないから、今日は歩美と距離を置こうと思っていたのに、相変わらず空気を読もうともしないやつだ。反応に困る。 「約束なんかしてない」 「したじゃないですか!日曜朝10時…」 「お前が勝手に言っただけだろ」 そうだ。オレは言っていない。歩美が勝手に話を進めただけだ。あれはまだ約束とは言えない。 「だって先輩、わたしを誘おうと思ったって言ったじゃないですか?」 やめろ恥ずかしい。オレの言ったことを繰り返すんじゃない。かっと頬が熱くなってきて、ますます話したくなくなる。 ああそうだよ。誘おうと思ってたよ。珍しく部活がない日曜に見たいから、前日の土曜にサッと誘って、サクッと見に行きたかったのに。よりによって月曜に誘ったりするもんだから、いったいどうしてくれる。日曜までずっとこんな、ドギマギした気持ちで居続けなきゃならないなんて。 今もうすでに、歩美の顔がうまく見れないのに。 オレのそんな胸のうちをよそに、歩美は、はーっと息を吐いた。なんだこいついっちょまえに呆れたりしてきやがって、と思いにらもうとしたら、 「…歩美、」 歩美は、なんだか泣きそうな顔をしていた。
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