宮田くんは、いい香り

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   ため息しか出ない。  ボクなんかが宮田くんのご実家に──つまり聖地へ──行くなんて、百年早いってことなのだろうか。  そりゃそうか。ボクなんかが──。 「どうかされましたか?」  真っ黒に染まったボクの曇天の心をかき分けるように降り注いだのは、一筋の光。 「宮田くん……?」  反射的に愛しい名を口にして自分自身でハッとした。  ──宮田くんだ。  心配そうにボクをのぞきこんでいたのは、この世の者とは思えないほどとんでもないイケメン──本物の宮田くんだった。 「おや、おどろいた。会津くんじゃないか」  キリッとつり上がった眉、涼やかだけど涙袋がふっくらとした目元、優しさのなかに厳しさのスパイスがきいた唇──。  うっかり凝視してしまい、ボクは慌てて目をそらした。 「どっ……どうも……」  家を見に行くつもりだったのに、まさかご本人と対面できるなんて信じられない。 「キミもこのへんに住んでるのかい?」 「い、いや……ボクは、あの……ヒマだからサイクリングしてて……」  まさかボクと宮田くんは運命の赤い糸でぐるぐる巻きになってるのかなぁと、彼の小指を凝視してしまう。  宮田くんの家の近くに宮田くんがいるのは運命とかじゃなく、当たり前のことなんだけど、まあ気にしない。  
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