宮田くんは、いい香り

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  「じ、じつは自転車のバッテリーが、急に切れちゃって……困ってて……」 「なんと。それは災難だったね」  宮田くんは長い脚を持て余しながらボクの自転車の前にしゃがみこんだ。  まるで重病患者をいたわるお医者さんのように、ハンドルをなで、サドル下のバッテリーを確認している。 「よかったら、うちで充電していくかい? 同タイプの自転車があるんだ。おそらく充電器も同じだろう」 「えっ、でも……」 「遠慮しなくていい。うちはすぐそこだ。困ったときはお互いさまだよ」  ボクは宮田くんの困りごとを解決したことはないのに。たぶん今後もすることはないと思うのに。  それなのに、お互いさまでいいんだろうか。何度も甘えちゃってるのに。  でも、せっかくの申し出を断るのも失礼か──。 「ありがとうございますっ!!」  この前は言えなかったお礼だけど、今日はハッキリと発音できた。  なんだかんだで宮田くんのお家に行けちゃうだなんて、ボクってかなりラッキーだ。 (宮田くんの家ッ宮田くんの家ッ宮田くんの家ッッッ!)  興奮とパニックでぐるんぐるん回っているボクの視界に、突然、すらりと細い指が伸びてきた。
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