宮田くんは、いい香り

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  「ん?」  ボクが押して歩いていた重たい自転車が、まるで誰かに操られているみたいに変な方向へと進み始めたのだ。  劣化したアスファルトがデコボコになっているらしく、ボクはなすすべなく歪みに引きずり込まれていく。  ついには重い自転車ごと車道側によろめいた。 「あぶない!」  宮田くんはとっさに腕を伸ばし、倒れゆくボクと自転車を同時に救ってくれた。  ボクの肩に腕を回してぎゅっと引き寄せ、もう片方の手で自転車を握りしめてくれた。 (あっ……)  ハンドルの上でボクと宮田くんの手が重なり合っている。  初めての素肌と素肌の触れ合い──。  彼の大きな手のひらはボクの体温よりも遥かに熱かった。痛みを感じるぐらいじんじんキて、とろけそうになっちゃう。 (あァっ、だめ! 宮田くんっ……!)  力強く握られ続けたら、ヤケドしちゃうかもしれない。  いっそ、こんがりと香ばしく焼いてくれないだろうか。もしくは『なにがあっても絶対にこの手を離さないよ』とか言ってくれないかな。  
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