片想い、始まりました

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   ボクの席を占領しているやつらは、氷なんて一瞬で蒸発させる太陽のよう。 「待って待ってチョコ入ってなさすぎてウケんだけど!」 「だははははっ」 「パン屋のじじぃ、マジ詐欺ってんぞ」  自分たちだけの教室だと言わんばかりに大声をあげ、爆笑。ギラギラと騒いでいる。  話しかけられるわけがない。  ボクは溶かされてしまわないよう、ひんやりするロッカーに寄り添って息をひそめているしかない。 (しょうがない。今日もトイレに引きこもるしかないか……)  お弁当をまだ食べていないけど、しょうがない。  お腹空いたけど、我慢するしかない。  弁当は机のなか。太陽には近づけない。ボクの昼休みは奪われたんだ。  泣きそうになりながら教室を出ようとしたとき、ボクの席のほうにむかって突き進む誰かを見つけた。  ウソみたいに長い手足、しゃんと伸びた背筋。そのシルエットだけで一目瞭然。  学級委員長の宮田(みやた)くんだ。  誰もがうらやむモデル体型でありながら、きっちりカッキリ校則通りのファッションをつらぬいている。  制服のボタンは首元までとめているし、さらさらの黒髪は七三にまとめている。装飾品は一切無し。  なのにまったくダサく見えないのは、色白で清潔感にあふれるイケメンだから。  おまけに成績は優秀。非の打ち所ゼロ。  アァ、まさにこのクラスの頂点にふさわしい人だ。太陽なんてレベルじゃない。  
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