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宮田くんが長い足を伸ばし、ボクめがけて歩いてくる。
いや、まさか。ボクなわけがない。きっとロッカーに用事が──。
「会津くん」
月夜のギターがボクの名前をつまびいた。
あまりにも良い声すぎて、感動のあまり全身の細胞がざわめく。
あわあわするボクの目の前で宮田くんはぴたりと立ち止まり、ふんわりと微笑んだ。
「君の席は空いた。座りたまえ」
(……えっ!!??)
「あそこは君に与えられた席。座りたいときにはちゃんと自分の権利を主張するべきだ」
(あ、あ、あっ……!)
「遠慮することはない」
驚きのあまりバキバキに硬直したボクの肩をほぐすように、ポン、と優しく触れてきた。
この世界でもっとも尊く、慈悲深く、さりげない肩ポンだった。
「もし困ったことがあったときは、わたしに相談してくれ。きっと力になるよ」
ボクが座れずに困っていたのに気づいて、席を奪い返してくれたのだ。
(宮田くん……いや、宮田さまっ……!)
こんなボクなんかのために。
さすが学級委員長。
もはや神だ。この学園でもっとも神に等しい存在。それが彼だ。
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