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「お家だと思ってたわけ? とんだ寝ぼけ野郎ねぇ」
「──わっ!」
「まったく。よく寝てるわけだ」
ボクの真横で困ったように腕を組んでいたのは白衣の男性だった。
三十代前後ぐらいの雰囲気ながら、ガキ大将みたいな意地の悪い笑みを浮かべている。
たぶん保健室の先生なのだろうけど、ボクはいままで一度も保健室を利用したことがない健康優良児なので確証はない。
根暗なくせに健康だと厄介だ。こういうときに困る。
「あ、あの、ボクは……どうして……」
「プールの授業中に倒れて運ばれてきたの。その様子じゃ覚えてないのね?」
「はい……ごめんなさい……」
「謝られても困るわけ。で、どうなの? 悪寒とかめまいは起きてない? 吐き気は? ……そう、元気になってよかったわね。じゃー早くそのベッド空けてくれないかしらね。後客が詰まってるの」
「あ。あ、はぁ……はい……」
世の中の保健室の先生というものは、春の日差しのようにやさしいと聞いたことがある。けれど、なんだかこの人は塩対応すぎやしないか。
おまけに言葉の端々がオネェっぽい。
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