保健室では、お静かに

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   ってか、白衣をスカジャンみたいにデコレーションして、入れ墨みたいに自分の名前を刺繍するなんて悪趣味がすぎる。  かなりやばい人かもしれない。  ──なんて思考を読み取ったのか、先生はわざとらしくヅカヅカと靴音を立てて目の前にやってきた。 「“尾花沢先生”って呼ばなきゃ両鼻にピンセットぶっ刺すわよ」  つむじを軽々とのぞきこんでくる圧倒的な身長差。  ボクはその巨体を前に、野ウサギのごとく背中を丸める。 「ごめんなさいっ! お、おっ、おばばっ……尾花沢先生!」  恐怖に舌がもつれた瞬間、先生の針金みたいな細眉はピクンと跳ね上がった。 「いま、オババって言ったな」 「いっ!? ぃいいい言ってまふぇーーん! 尾花沢大先生っ!」  
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