保健室では、お静かに

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  「よしよし、いい子ちゃんねー。分かったらさっさと教室帰りなさいねぇ」  大先生は明らかな作り笑いでボクをあしらうと、くるりと背を向ける。  さっきまでボクが使ってたベッドシーツを手のひらでパンパンと叩き始めた。  ダニ退治──いや、ベッドメイキングしているつもりらしい。  腕を振るうたびに強調されるのは、昔、水泳でもやってたのかと言わんばかりの逆三角形の背中。  見事なまでのオス。  肩幅も広くて、見るからに雄々しい。  素晴らしい肉体──とは思うけど、ボクとしてはちょっと気後れする。  ボクは筋肉こそ大好物だけど、あまりにも露骨にマッチョすぎるのは好きじゃない。  日常のなかで、ふとした瞬間に感じる筋肉にドキドキしていたい派だ。 (やっぱり、宮田きゅんが一番だぁ……)  彼こそがボクの理想の筋肉美。  尊い。尊すぎる──。 (あれ? そういえば、宮田くんってどこにいるんだろう……)  そうだ。すっかり忘れていた。  もとはといえば、具合が悪かったのは宮田くんのほうだったはず。  保健室に運ばれるべきだったのは彼だ。なんでボクがここにいるんだろう。  
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