宮田くんは、いい香り

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  「痛っ……、って、えっ!?」  踏み込んだペダルが急にボクの足を拒んだ。  常日頃から電動アシストに依存している弱々しい足首は、グギッと音を立てて敗北。  みるみるうちに自転車全体が重くなり、ただの金属の塊と化した。 (え、うそ? なんで!?)  バッテリー残量を確認すると、0%だ。  そういえば、昨日も一昨日も充電し忘れたっけ──。 「やばい……寄り道なんてするんじゃなかった……」  頭のなかの花畑が一気に枯れた。お通夜モード。  ここからボクの家はあまりにも遠い──っていうか、電動アシスト無しでは到底太刀打ちできない上り坂があるのだ。  これはかなりやばい。  とりあえず路肩に自転車をとめ、しっとりと濡れた縁石にしゃがみこむ。  じんじんと痛む右足首を回復させることにした。
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