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愛とエゴ
えーっとぉ…何があった??
え?
ん?
サラに告白された??
いや、女神だよね…神様だよね…
ずっとって言った…?こっちにきてからのやり取りで好きになったって事??
いや…さすがにそれはないよね?あの会話で好きになられることってあり得るの??いやないよね?
サラ「…直」
サラが何か言おうとした瞬間目の前が光ってサラとはまた違った雰囲気の美人が現れた…。
私に美人に出会う運なんてものがあるなら今日で使いきってるな…なんてアホな事を考えていた。多分半ば放心状態に陥っていたのだと思う…。
この人も神様だよね多分…。
そしてそんな、多分神は私にニッコリ微笑むとスタスタと歩いてサラの元にいき、何故か手を振り上げサラへ脳天チョップを見舞っていた…。
これ、私思考停止してもいいよね?許されるよね。なんならこのまま見なかった事にしてこの場から消えたいんだけど!!うー…なんかとてつもない面倒な事に巻き込まれた予感。
なんて事を考えながら固まってると、多分神が私の方へきて
多分神「はじめまして、私は彼女の指導担当の女神ルカです。」
と頭を下げた。私も反射的に名乗り頭を下げた。
ルカと名乗った女神様は、さっさと移動して私の前に座った。
サラもルカと名乗った女神様の後ろに控えるように座った。
サラは女神ルカがきてからずっと無言だ。ビビってる?顔色が悪くなった気が…指導担当って言ってたから怖いのかな?なんか声もかけにくい…。
正面に女神様が座ったことでなんだか居心地が悪い(汗)
自ら座ったんだし、大丈夫だよね、不敬罪とかにならないよね?
しかもちょっと怖いから斜め向かいくらいにずれたいんだけど、でもなんだか、貼り付いたような笑顔で見つめられてて、動けない…。
良くわからない状況に、微妙に緊張しながらいると何故か目の前にお茶とどら焼が突然出てきた。女神ルカを見ると笑顔で「話を聞きながらでもどうぞ♪」
と、言われた。
何故でしょう…喉を通りそうもありません。
女神ルカ「話は、水沢直子さんが20歳の頃にまで遡ります。」
おぉ、いきなり話し始めた!
?どういう事?なんで遡るの?え?何の話がはじまるの???
はてなマークの私を置き去りにしたまま女神ルカは構わず話を続けた。
女神ルカ「サラは私の元で300年下積みをし、いよいよ1人での実地勉強段階にはいったのですが、そこで水沢直子さんとサラは出会ったのです。」
…なんでいちいちフルネーム?いや、そんなことよりもサラとはそんな前には会ってない…よね?覚えてるよ、間違いなくこんな美人に会ったら。私はそう思いながらサラを見た。困った様に微笑むサラ。少し首を傾げた仕草で長い髪がさらりと肩から落ちる。
うっわ!かわいい!そして神々しい!そりゃそーか女神だし。声だけの時にはわからなかった高貴な雰囲気!
女神ルカ「先ほども言いましたがその時のサラは女神として独り立ちする為に色々な国で知らなければならない事を勉強する為、下界によく行っていたのです。もちろん神としての力を使えばあっという間に全ての事が知れて事足りるのですが、実際に経験する事、空気に触れる事、本を読み学ぶことは神界で推奨されているのです。ですからサラは何処の場所にするか考え、たまたま地球の日本を選んだ。そしてとある図書館で本を読み日々色々な事を学んでいたのです、このままの姿だと目立つので、お婆さんに姿を変えて。」
そこまで聞いて思い出した…私、20歳の頃、暇さえあれば図書館に行ってた…もしかして、あの図書館?
女神ルカは頷いて
「そう、そこでおばあさんになったサラは若い男の子にぶつかられ転んでしまった。それをあなたが助けた。覚えていますか?」
…まさか…さちさん?田辺さちさん?よく一緒に本の談義をした、あのかわいいおばあさん!
もちろん覚えてますとも!私が図書館に行く日は必ずいて、だから毎日通ってる有閑マダムだと思ってたけど、まさか勉強中の女神だったとは…。
女神ルカ「そう、そのおばあさんになっていたのがサラよ。」
驚いた!本当に驚いた!そして懐かしかった。大学の夏休み期間、本を読むことが大好きだった私が、バイトの休みにはいつも入り浸ってたあの、憩の場の図書館!そこで同じ本好きなお婆さんとの出会い!それ以来さちさんとの話も楽しみになって益々図書館に通いつめたっけ…まさかあのサチさんがサラだったなんて!私は楽しかった日々を思い出して笑顔になりサラを見た。
サラも私を見て少し遠慮がちに微笑む、私は思わず手を伸ばした。サラもおずおず手を伸ばしてきたのでその手をとった。なんだか本当に嬉しかった。姿は違っててももう会えないと思っていた懐かしい友人に会えたのだから!
女神ルカはそんな私達をみて少しだけ微笑んだが直ぐに真面目な顔に戻り話を続けた。
それを見てサラも黙って手を引くそして私から少し距離をとり女神ルカの後ろへ下がった。
え?…どうしたのかな?
女神ルカ「ここからは、神としてしてはいけなかった禁忌が関係してくる話なのです。」
サラもうつむいてしまった。
えー嫌だぁ…めんどくさそう…しかもなんだろう…ちょっと聞くのが怖いかも。けど女神ルカを見てると断る権利はなさそうだし…。ため息を一つ吐いた私は何となく姿勢を正して座り直した。そこで女神ルカは話を続けた。
女神ルカ「すっかり水沢直子さんを好きになってしまったサラはあなたの事を調べた。私達神には簡単な事です。そしてあなたの恋愛対象が女性ということを知って嬉しくなったサラ。でも神には人間との恋愛は許されていませんので不満に思ったサラが神々に直訴。でもあっさり却下。そもそも私達神には寿命もない、年齢と言う概念もない、そして見た目も変わらずです。そういう人間とは違った存在。それに、神と関わりすぎるとその人間に影響が出て亡くなります。神の愛するパワーに人間は命が吸いとられ衰弱し、死んでしまう。だから近づき過ぎるのはタブーとされています。」
…サラが私の友達のさちさんだったなんて!嬉しかった。そのさちさんが私を好きになった。
つまりサラが…私を好き。
でも神と人間の恋愛はタブー。
って事は過去にも同じことがおこったってことだよね…。
女神ルカ「そうです。サラだけではなく、他にもいたのです。そして自分のせいでパートナーが亡くなり傷つく。…神も辛かったり悲しかったりするのです。ですからそんな想いをさせることがないように、忘れる事を命じました。」
うーん…サラが私を好き…そんな前から…なんか…現実感がないけど…本当ならうれしいかなぁ…。あれ?けど私が死んだのってたまたま偶然じゃなかったって事か。サラが私に近づき過ぎたからなの?うーん…
思わず長考してしまっていたが、女神ルカの「水沢直子さん、話を続けます。」
と、言う声に我にかえった私はフルネームなのが妙に気になったけど今言うべきじゃないかなって思って頷き「理解が中々追い付かないのと現実感がない事で頭がちょっと混乱してますけど、大丈夫です、続けてください。」
そう言うと女神ルカは少し私をじっと見つめていたが、黙って頷くと話を続けた。
女神ルカ「そんな訳で1度はサラも諦めようとし、地球の時間で六年間。神の世界での3日間あなたの事をサラは諦めました。」
え?私の六年間が神の世界では3日なの?時差半端ないってかこれ時差かな?私はそんなどうでもいい事を考えていたが、いや、それよりも気になるのは我慢3日って短くない?!私は呆然としながら女神ルカを見つめた。
女神ルカ「とりあえず続けます。その間あなたには彼女がいましたね。うまく行ってたのに何故か急に別れる事になった。それはサラが関わっていたのです。もちろん神とはいえ人の心を強制的に変えることなどできはしません。しかしサラはあなたのパートナーについて調べ、パートナーの好みの別の人との出会いを積極的に作りその機会を増やした。そうすることでパートナーの方の心があなたから離れ、あなたとの別れを決めたのです。そしてあなたを孤独にする事でサラはある意味あなたを取り戻した。」
私は、元カノとの別れにそんなエピソードがあったのかと驚いた。確かに急に何もかもうまくいかなくなって別れたっけ…。責めるつもりもなく、何となくサラを見た、小さくなって消え入りそうだった。
女神ルカ「更に、あなたの会社の三浦結花さん、本当なら彼女はあなたと付き合い、80歳まで一緒にいて添い遂げるはずだったのです。でもこれもサラが運命の出来事の出会いの場をことごとく邪魔し、付き合うこと自体を阻止してあなたの人生を変えた。」
えー!三浦さんと!?驚き!かわいい子で性格も良くて好みのタイプだったけどまさか添い遂げるほどの運命の相手だったとは…。なんだろう、なんか私の人生中々悪くなかったんだなぁ~なんて我ながらとんちんかんに思ってしまっていた。
女神ルカ「そして、極めつけはあなたへの想いが強くなりすぎて深夜に忍びこみ、気持ちが暴走し自分の力を制御出来ず、あなたを死なせてしまった。慌てたサラはあなたを甦らせて、別の世界にとばし、自分の罪悪感から今度こそあなたの幸せを見守ろうと決めた。そして、そうする事で他の神々から許しを得たのにもかかわらず、いざとなるとやっぱりエゴがでて、懲りずにアイテム屋の女性や宿屋の食堂での女性との出会いを妨害してしまった。そして極めつけは、影響があると知りつつまたあなたに会いにきて図々しくも告白までした。これが今までサラがあなたの人生から奪った全てです。これを聞いてあなたはサラをどうしたいですか?」
私は少しうつむいて考えていた。確かにエゴい…。私の人生を変えている。でも私は普通の人間だから何をどう考えていいのかもわからない。でも…今や私を見ることも出来ず目を固く閉じてうつむいているサラを見て私はどうしたいのか、どうしたらいいのかを考えた、そしてわからないまま話した。「私は…考えが全然纏まらない…私は人間だから神様の事はわからない…どれだけの事ができて、どれだけの事が可能なのか…でも私と別れた元カノや、付き合う予定だった三浦さんの事も、それが女神であるサラの力でダメにされたと言われても正直あまりピンとこないんです(笑)。それにいずれ三浦さんと付き合うことになって添い遂げるのなら結局元カノとはいずれうまくいかなくなったって事でしょう?それに元カノに新たな出会いがあろうがなかろうが、私より出会った別の誰かに元カノが惹かれたのは事実ですよ、ならその出会いのきっかけは確かにサラだったかもしれないけど、いずれ別れがきたんだと思います。元カノにとって私にはそこまでの魅力がなかったってことですし(笑)。それまでもサラのせいにして怒れるほど、私は図々しくないです。」
女神ルカ「確かにそうとも言えます。でも三浦さんの事はどうですか、付き合うためのきっかけを邪魔したのですよ。」
うん、確かに酷い事だよね。でもそう言われても起こってもない事を私にはそれを事実として受け止める器量もない(笑)。それをやられたとすれば確かにかなりのエゴい行為だと思う。でも私にだってたくさん欠点があって嫌だけどエゴい部分だってもちろんある。そしてそれは神様にもあった、ただそれだけの気がする。そしてそれは私にとって、とても新鮮な事だ、だって神様なら何でも思い通りで完璧な人生って考えてしまっていたから(笑)でもこちらの世界にきてからいままで、短い間だけどすごく人間に近いって感じがして、女神ってわかってたのに友達みたいに感じてた。それに…
「そこまでエゴ丸出しで私を好きでいてくれたのなら、その気持ちに応えたいかなって思う…。それが私の今の気持ちですかね。」
女神ルカは私をじっと見つめ「サラを愛せると?」
と、聞いてきた。私はちょっと考えてから頷いてサラを見た。
サラは両手で顔を覆って泣いていた。女神様も泣くんだ…。わぁお!涙めっちゃ光ってる…神様の涙って光るんだ、新発見!
女神ルカ「…わかりました。じゃあサラ、良いですね?覚悟はできてますね?」
私は訳がわからずキョトンとしてしまったけど、なにやらヤバイ?とおもって、サラをみた。
サラは女神ルカに触れられると神様の神々しさが失くなり涙も光らなくなった。そして普通の綺麗な女性になった。
え?何?何が起こったの?
女神ルカ「水沢直子さん、実はサラは女神の謹慎処分に決まっていたのです。もしここであなたに受け入れられなくても女神の力を失い、人間として生きることが決まっていたのです。でも、あなたはサラを許すといってくれた…正直心配だったんです。あなたに拒絶されたら世間知らずの力を失ったサラにこの世を乗り越えられるのか。甘いと言われそうですが、私はあなたにサラをお願いしたかった。でもとてもお願いできるような状況でもなかったので、あなたに決定権を委ねたのです。私もひどくずるい方法を取ってしまいました…。申し訳ありません。神など万能ではないのです。」
女神ルカは自嘲気味に笑うと
「水沢直子さんに許された事でサラの人間としての人生が決まって良かった。サラは水沢直子さんが天に召された時点で女神に戻る事になりました。サラは今、神としての力を失っていますので、これからはサラもあなたと同じように年を取り、あなたへも影響をあたえませんので安心してください。では末長くお幸せに。サラ、おめでとう。」
そう言うと女神ルカは来たときと同じようにぶわんと居なくなった。
…テーブルの上にあったどら焼…なくなってる。
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