違うの、あのね

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散々に甚振られた僕の唇。 それでもね、心はまだ不足を訴えているの。 「それにしても、どうして君はあの帰宅ラッシュの人ごみから僕を見つけられたの?」 「ふふっ、秘密です。」 「悪戯っ子だね。」 「先輩こそ、僕に何も告げずに、大学を卒業してこの大都会に行ってしまわれたでしょう?」 貴方への盲目的な恋患いにどれだけ苦悩したのかなんて、きっと大企業で出世のレールに立てた貴方は気にする事すらなかったでしょう? ほら、その証拠に貴方は左手薬指に出世の印を光らせている。 恋心を抱いてもいない社長令嬢との婚約を容易く決断する、そんな冷徹な貴方も僕は愛おしくて仕方がないの。
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