Story0 最悪が告げる冷酷な差

2/2
151人が本棚に入れています
本棚に追加
/269ページ
震える手足に気づいても、不思議と恥ずかしさは無かった。 ただあるのは悔しさだけ。何も出来ないのか、偉そうなことを抜かしておいて、いざとなったら全くの無力。 何が最強。結局は井の中の蛙。わかっていたけど、心のどこかに慢心があったのを否めない。そんな自分が情けなくて、悔しくて。 (守ってやるって約束したのに……所詮口だけ野郎だったのかよ、俺は…) 噛み締めすぎて口の中に鉄の味がする。現実はどうにもならないほど残酷に結果だけを突き付けてくる。今目に映る少女を守ると言ったのに、自分にはその力が無い。圧倒的なまでに足りない。 歴然とした力の差。少年の心は今にも折れて砕けそうになっていた。 そんな彼の耳に届いたのは、守るべき少女の声だった。 「―――ありがとう、ごめんな」 何故礼を言う?何故謝罪をした? わからない、わからない、わからない。 だけど、それが間違っていることだけはわかっていた。 だからだろう。少年は震える手足に力を籠め、血に染まった顔を上げて前を見る。 涙を浮かべて笑う少女を、少女の前に立ち尽くす巨悪を、少年は光り輝く眼光で見据える。 「まだだ」 約束したんだ。 「まだ終わってねえ」 誓ったんだ。 「―――絶対にお前を守る!約束は破らねえッ!!テメェなんかに高鳴は渡さねえぞォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」 再びその身を奮い立たせ、少年は今、紛れもない最強へ吠えた。 だけど、咆哮を飛ばされた相手は変わらず薄笑いを浮かべるだけ。 「無駄とわかっていても噛み付きますか。ならば終わらせてしまいましょうか、鈴重夜道(すずしげよみち)さん」
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!