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すると美子ちゃんは「えへへ」と顔を少し紅潮させ、頬をぷっくりさせて微笑んだ。  あの時、佐々木さんにふりほどかされそうになったとき、助けてくれた。氷で滑らないように一気に溶かしてくれた。それだけじゃない。私が大きなケガをせぬよう、佐々木さんを逃がさないよう力を貸してくれた。 「でも、手、ケガしちゃったね。ごめんね」  泣きそうな顔の美子ちゃん。瞳は潤んでいた。そんな顔もまた、可愛らしい。 「何言ってるの。充分、美子ちゃんは助けてくれたじゃないの」  私はまた、抱きしめる。  幸せな気分でまた、いっぱいになる。この子が、福を呼んでくれた。私達従業員が悩んでいた万引き魔について、もう悩む必要がなくなった。
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