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さっぱりした優樹は二階の部屋にあがろうと階段をのぼりかけ、ロビーにいる和奏を見かけた。どうやらライン中のようだ。あまり楽しくないのか難しい顔をしている。何秒か見ているとスマートフォンをバフっとソファーに叩くように置いた。
「どうかしたの?」
「ああ。優樹。別にね」
不機嫌そうだ。
「また彼氏と喧嘩?」
「まあね」
「もっと彼氏も大事にしてやれば。いつものあれでしょ」
「どっか行こう行こううるさいのよね。夏だからってさ」
和奏はペンションを優先にするため、男からよく不満を言われているようだ。
「和夫おじさんはもっと遊んでもいいよって言ってるじゃん。俺も手伝ってるしさ。彼氏とどっか旅行でも行けば」
「いいのよ。別に行きたいことなんかないし。優樹こそ彼女、怒んないの? うちでバイトばっかりして」
「家事手伝いって言ってある」
はあっと和奏はため息をついて
「お互いに人のことは言えないよね」
と頭の後ろで手を組んだ。
優樹は和奏のはす向かいのソファーに座り
「ねえ。ちょっと聞いてくれよ」
と無垢な瞳を見せた。
「ん? 何。いいよ。」
「この前さあ」
優樹は両親の寝室を覗いた話をする。和奏は苦々しい気持ちで聞いていた。
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