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「ねえ。お父さん。優樹が少し心配なの」
読んでいる雑誌を閉じて、直樹は緋紗の不安げな横顔を見た。
「最近なんとなくだけど考え込んでる様子があるの。聞こうとすると先手打たれちゃって優樹から笑顔で話しかけてくるのよ。なにかすごく悩んでるんじゃないかって」
「母親の勘?」
「勘がいいほうじゃないんだけどね。ほんと、なんとなく。進路のことじゃなさそうだし」
「大丈夫だよ。心配しなくても。あいつも考え込む方だろうけど、性格がねじれてはいないから」
「悩みがあれば話してくれるかしら」
「さあね。そこは期待しないほうがいいよ。言いたくないこともあるだろうからね」
大きなため息をつく緋紗の肩を、直樹は抱いて自分の身体に引き寄せた。
「優樹ももう男になるんだよ」
そう優しく言い口づけをした。
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