死がふたりを結ぶまで

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元々我楽は今の由苑のように武力で富を築いてきた国だった。そのため、五年以上も戦をしていなかったにも関わらず豊富な武器があった。藤定の命により手入れの行き届いた武器たちはすぐにでも使える状態で武器庫に並んでいる。争いを好まない藤定が武器の管理だけには厳しかったのは、少なからずともこのような未来を危惧していた為だろうか。 先程偵察に行っていた部下から由苑の軍がこちらへ向かってきているとの報告が入った。数日中には我楽に着くだろう。方角的に由苑の軍が来るのは我楽の南方だ。そこは藤定が率いる軍が迎え撃つことになっている。宗近が任された東方は挟み撃ちを防ぐためであり、主な戦場になるのは藤定や佐久間の軍が向かう場所だろう。やはり藤定を直接守ることは出来ないが、城にいるだけよりよっぽどいい。これ以上の我儘は言えない…が、それでも藤定の側に居られないことに対する憤りに、宗近は手入れのために握っていた刀に力を込めた。藤定に仇なす者はたとえ女子供でも許さない──今やるべき事は一人でも多く斬り戦をおわらせることだけだ。宗近はそう心に刻んだ。
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