死がふたりを結ぶまで

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争いでは何も生まれない。 幼い頃から父や国を見てきて思ったことだったのだが、いざ争いのない世を創ろうとしても、誰もそれを簡単には受け入れてくれなかった。 『私は見とうございます。藤定様が創る、皆の笑顔が絶えぬ国を。』 ふと、宗近の言葉を思い出した。藤定が当主を継承する少し前、自らの理想を語った際に宗近が言った言葉だ。戦乱の世では考えられない到底夢物語の様な理想を、宗近はずっと信じ今までついてきてくれた。だから誰からも受け入れられずとも、自分のやり方で国を治められてきたのだ。…………そんな宗近を、愛しいと思うのはいけないことなのだろうか。幼い頃に見せてくれたはち切れんばかりの笑顔も、生真面目になった性格も、絶対的な忠誠心でさえ、こんなにも愛おしい。あの逞しい腕に抱かれたいと、あの低く良く通る声で名を呼ばれたいと──── 「……っ。」 そこまで考えて、藤定ははっとして頭を軽く振った。分かっている、それは望んではいけないこと。自分が国の主である限り、相手が側近である限り、本当に望んではいけないもの。それでも焦がれてしまうのは、宗近も分かった上で求めても与えてはくれないと知っているから。これは宗近に対する甘えだと、藤定は自嘲気味に笑った。
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