死がふたりを結ぶまで

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「……あぁ、……。」 「……は………ではないのか。」 広間を通り過ぎようとした辺りで、中から誰かの話す声が聞こえてきた。こんな所で油を売っているのは誰だと宗近が注意しようと襖に手をかけた時、中の話が二人の耳にはっきりと聞こえた。 「それにしても上様はどういうお考えなのだ。」 「戦いを放棄など今までに無かったこと。前当主様が知ればなんと仰るか。聞いたか、民の間では『命惜しさに国を売った』などと言われておるそうだぞ。」 「まったく嘆かわしいことだ。奥方様との間に子が出来ぬことと言い、この先が思い────」 「おぬしら!!上様に仕える身でありながら、上様の御前でなんと無礼な!!」 宗近はそれ以上堪えきれずに襖を力強く開け放つと、中で話していた二人の若い部下を怒鳴りつけた。 「な、長尾岨様!?それに…上様っ!?こ、これは…その!!」 「上様!!いえ、今のはっ……!」 二人は突然のことに驚きながら、宗近の後ろにいた藤定を見止めると、真っ青になって声を震わせた。 「「申し訳ございませんっっ!!」」 二人は宗近の怒り様に恐れをなしてその場に倒れ込むように土下座をする。 「謝罪などで済まされるとでもっ────」 「長尾岨、もう良い。行くぞ。」 二人に切りかからんばかりだった宗近を止めたのは、その様子を静かに見ていた藤定だった。 「上様!?ですがっ…。」 何故止められたのか分からず、宗近は藤定を振り返ったが、藤定は頭を畳に擦り付けて震え上がる二人を一瞥しただけでそのまま行ってしまった。 宗近も慌てて後を追う。部下達はそのままだ。例え藤定が許したとしても宗近は許すつもりなど毛頭なかったが、今はどうでもいいこと。最も優先すべきは藤定だけだ。
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