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私はいつも手を合わせる
「やっと終わった……。」
少女はかすかに微笑みながら階段を上がり、屋根裏にある自分の部屋に向かった。
蜘蛛の巣だらけの屋根裏部屋に立って、窓を開ける。
涼しい夜風に、疲れがだんだん取れていくのを感じた。
義理の家族がやってきて以来それまでの暮らしは一変し、少女は召使のような存在となっていた。
父親の再婚相手とその連れ子が、いつも少女をいじめるのだ。
父親が亡くなってからいじめはひどくなっていた。
義理の家族が母親で、連れ子と一緒に少女をいじめるというのは、おとぎ話を読み返せばよくある事だろう。
そんな時のヒロインはといえば、いつかきっと素敵な暮らしになると夢見ている。
しかしこの少女ローダは、別にこのままでもいいと思っていた。
このままでも、ローダには希望があったからだ。
夜になるとローダは窓を開け放ち、窓に向かって手を合わせ目を閉じる。
それをやる時刻は毎日同じでなくてもいいが、差は一時間以内。
つまり一時間以上早めたり過ぎたりしてしまうと、ダメだった。
ある日、そうするように言われたのだ。
手紙を見たのか直接言われたのか、誰からいつ言われたのか。
ローダは覚えていない。
でも、ローダは窓を開け、目を閉じて、手を合わせる。
そうすると一分間だけローダは屋根裏ではなく、宮殿の中に行けるのだ。
夢を見ているのか思い込みなのか、瞬間移動か何かで実際にある王宮に行っているのか、幻覚を見ているのかは分からない。
ただ分かっているのは窓を開け目を閉じ手を合わせるだけで幸せな気分になれるということと、この動作や時間を「クローバータイム」と呼ぶのだということだけだった。
王宮にいる一分間の間、ローダは王女だった。
素敵なドレスを着ていたし、ダンスもできた。
たった一分間。
それでもローダには、夢のような時間だった。
だからお城に行くという夢のような事を空想しているより、実際に起きている一分間だけの王女という奇跡で満足する方が、ローダにはよかった。
そして今日も、ローダは手を合わせる。
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