子供の発言・金のかすてーら

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子供の発言・金のかすてーら

 画面のなかで、悪党から菓子折りを差し出された悪大名が、白い紙に包まれた菓子を1つ手に取って、 「ほほう。金のかすてーらじゃな」 と言って、受け取った。    観ていた子が訊いた。 「母ちゃん、『金のかすてーらじゃな』って、なんのこと?」 「『お前の下心はわかっとる。』っていう意味よ」  その子は、わかったのかわからなかったのか、曖昧な顔で、ふうんとうなずいた。  後日、近所の空き地に、大型スーパーが建設された。スーパーの関係者が来て、「よろしくお願いいたします。」と言いながら、菓子折りを差し出した。子供はすかさず、あの言葉を使ってみた。 「ほほう。金のかすてーらじゃな。」  母親は、知らない人にばか言って!と思い、 「余計なこと言わなくていいの!」  と、我が子を小声で叱ってから、ごまかすような笑顔で菓子折りを受け取った。  そして現在、そのスーパーの深夜にあたる営業時間帯を巡って、訴訟トラブルが起こり、あの日、スーパー側が近隣一帯に配った菓子折りを、受け取ったか受け取らなかったか、が、調査された。受け取ったものは、迷惑をかけられるのを承知したものとみなされるという。  そんなの知らなかったと騒ぎになるなかで、金のかすてーら発言の子の親は、内心、気が気ではなかった。
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