スケジュール

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 ある日、友人に呼び出された僕は、思いがけない話を持ちかけられた。  人気のない喫茶店で、友人ははばかりながら、言ったんだ。 「なぁ、人魚姫に会ってみたくないか?」 「はあ?」  なに言ってんだこいつ、と思っている僕に、友人は畳み掛けてきた。 「そんじょそこらの人魚姫じゃない」  そんじょそこらの人魚姫って、どこに居るんだよ。茶化そうとした僕に、友人はさらに言った。 「下が人間で、上が魚。な、童話なんかと全然違うだろ? しかも、すごい美人!」 「ちょ、ちょっと待ってくれ。上が魚なんだろ?」 「そうだ」 「それでなんで美人なんだ?」 「そこだよ! おれもびっくりしたんだ。だから、親友のお前にだけ、こっそり会わせてやろうと思ったんだよ! マジだぜ、ほんま、マジで美人。魚だけど。魚なのに! 言っとくけど、人面魚なんてオチじゃあないぜ。どこから見ても魚だ。あー、思い出しちまった! 惚れるー!」  僕の心は揺れ始めた。魚、なのに惚れるほどの超美人? 会いたくないかと言われたら、それは……あ、でも一応姫なわけだし、そんな高貴な人を、好奇心の対象として見るのは、失礼じゃあないのかな……。  考えている僕に、友人は言った。 「お前も会ってびっくりしろ。いつが空いてる?」 「え、えっと、いちばん早いのは、次の土曜日かな」 「よし、決まりだ。朝、車で迎えに行くから、待ってろ」  こうして僕は次の土曜日、超美人の魚、いや人魚姫に会うことになった。スケジュール帳に、なんて書き込めばいいんだ?
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