何を見ている?

1/1
前へ
/90ページ
次へ

何を見ている?

 暑さでへたるお盆の真昼、オレは友人と喫茶店で涼んでいた。1人でもよかったが、ナンパされる確率を下げるために、友人を誘ったのだ。  しかし、お盆だけに家の事で皆忙しい。空いていたこの友人は、自分は両刀だと、みずから公言している奴だ。今日ここに誘ったのを、二人きりでのお茶を、変に誤解されぬよう、言動には気をつけねばならない。  そんなことをあらためて肝に銘じていたら、クラッシュゼリーの欠片が胸元に落ちた。 「おっと!」  オレはとっさに タンクトップのなかをすくうように、片手の甲でぬぐった。  その時、向かい側から視線を感じた。見れば、ヤツが嬉しそうな顔をしていた。 「何見てんだよ!」  反射的に言ったオレに、ヤツはハッとした顔になって言った。 「いや、すまん。いま、ドラ〇もんの幻が……」  …………ドラ〇もん。  しばし考えたのち、オレは思った。こいつに関する噂の七割は、きっと誤解に基づくものだろう、と。うん、そうにちがいない。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加