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何を見ている?
暑さでへたるお盆の真昼、オレは友人と喫茶店で涼んでいた。1人でもよかったが、ナンパされる確率を下げるために、友人を誘ったのだ。
しかし、お盆だけに家の事で皆忙しい。空いていたこの友人は、自分は両刀だと、みずから公言している奴だ。今日ここに誘ったのを、二人きりでのお茶を、変に誤解されぬよう、言動には気をつけねばならない。
そんなことをあらためて肝に銘じていたら、クラッシュゼリーの欠片が胸元に落ちた。
「おっと!」
オレはとっさに タンクトップのなかをすくうように、片手の甲でぬぐった。
その時、向かい側から視線を感じた。見れば、ヤツが嬉しそうな顔をしていた。
「何見てんだよ!」
反射的に言ったオレに、ヤツはハッとした顔になって言った。
「いや、すまん。いま、ドラ〇もんの幻が……」
…………ドラ〇もん。
しばし考えたのち、オレは思った。こいつに関する噂の七割は、きっと誤解に基づくものだろう、と。うん、そうにちがいない。
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