何を見ている? ─都市伝説編─

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何を見ている? ─都市伝説編─

「おい、今度の旅行の部屋割りな、お前、水原と二人部屋でいいか?」  水原というのは、例の両刀の友人のことだ。オレとあいつ以外は妻もしくは彼女連れだと聞いている。なら、しかたないか、とオレはうなずいた。 「ツインなら全然かまわない」 「あったりめーだ、バカ」  幹事の笹山は笑い、「じゃ、決まりな」と言って、電話を切った。  そして旅行初日の晩、観光疲れしたオレは、風呂をシャワーだけで済ますなり、 「オレ、夜中にトイレに起きるクセあっから、お前壁側で頼む」  そう言って、通路側のベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。  だが、水原の返事が「んー、壁ぎ……」と、変に途切れた。頭を起こしてふり向くと、水原は二つのベッド越しに、何かを凝視していた。 「何見てんだ?」 「…… 聞いたことないか? ホテルの部屋の壁に、絵が飾られていたら、必ず裏を見たほうがいいって。── こっそり御札の貼られた、いわくつき部屋の可能性があるって」 「げっ、まじか」  オレは壁をふり向き、そこに額縁が掛けられているのを見るなり、裏を確認しようとした。水原はソッコーでオレの肩を掴んで止めた。オレは言った。 「確認したほうが安心だろうが!」  水原は額縁に視線を固定させたまま、首を横に振り、 「見ないほうが、いい」 と、言った。そして、「俺が壁側でOKだ。」と言って、旅行カバンからなにやら取り出した。ジャラッと音がした。数珠、だ。 「おい、お前いったい何を…」 「聞かないほうが、いい」  水原は、オレに背中を向けて、横になった。  ……オレは疲れに任せて爆睡することにした。  翌朝、身支度して部屋を出たら、隣の部屋から女が頭だけ出して、オレたちをにらみつけた。男の手がにゅっと出てきて、その頭を押さえてドアを閉めた。 「なんだ、あれ」 「まったくだ。俺が一晩そっちに封じ込めたからって」 「え?」  オレ、まじで、いま、何を見たんだ?
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