花占い

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花占い

 私はタンポポの花で、花占いをしていた。なんども「好き?」と訊き、「きらい?」とも言った。  最後の1枚は、『きらい』になってしまった。私は決定打になる花びらを見つめて、「きらい……」と、つぶやいた。そのとたん、胸に刺されるような痛みを覚えた。私は、屋上から見える夕景に向かって叫んだ。 「やっぱり好きー!!」  あなたのことを、きらいと言うだけで、私の恋心は傷つくんだ。  試さないと自分の気持ちもわからない、なんてね。五歳の姪っ子に言ったら、きっと笑われるだろうな。大人は馬鹿だねって。  そんなことを誰にともなく呟いていたら、後ろから肩を叩かれた。用務員のおばちゃんが、ホウキと塵取りを、私にぐぃと渡してきた。 「自分の始末は自分で。それが賢い大人の基本。ほんと言うと、おばちゃんの目じゃあ見えんの。こんな細っこい花びら散らかして。しかもこんなオレンジ色のなかで黄色て。老眼泣かせやで」 「す、すみません」  私はあわててホウキと塵取りを受け取った。おばちゃんは、 「グッドラック!」 と、背中越しに片手を振って、去った。
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