身代わり王女

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身代わり王女

私はそのまま王宮から出してもらえず、一晩を過ごすこととなった。 王女の部屋は、最初に入った居室、王女が眠る寝室の他に、書斎があり、そこに私用のベッドが用意されていた。 うちのベッドよりふかふかで寝心地はいいはずなのに、なかなか寝付けない。 これからの事に対する不安と、隣室の人の気配、慣れない枕。 その全てが、私の眠りを妨げた。 それでも明け方になり、ようやく、ウトウトと眠りに就くけれど、ダニエラの声によって、それも儚く終焉を迎えた。 「クリスさま、おはようございます。 クリスさまの身の回りの物をお持ち 致しましたよ。」 「ん… ダニエラ… 今、何時?」 私が寝ぼけた声で問うと、 「6時でございます。 クリスさま、早く起きてください。 今日から王女さまの先生をなさるんです よね? 寝坊をして遅刻をする先生なんて、聞いた こともございませんよ。」 とダニエラがいつものように賑やかに言う。 ん? 王女の先生!? 驚いた私は、一瞬で目が覚めた。 「ダニエラ、どういうこと!?」 私に尋ねられて、ダニエラの方が目を丸くする。 「どうもこうも、昨日、あの後、使いの方が おっしゃってましたよ。 クリスさまが、王女さまにピアノと バイオリンをお教えになるためにお城に 住み込みになるって。 違うんですか?」 クラウスさまは、なかなかどうして、嘘がとてもお上手らしい。 「違わないわ。 私、寝ぼけてたみたい。 ダニエラは、ここにずっといるの?」
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