身代わり王女

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それから私は、クラウスとユリアの監視下での生活が始まった。 午前中はクラウス相手にダンスの練習をして過ごす。 「王女殿下、ダンスのご経験は?」 「困らない程度には… 」 「では、バイオリン講師だけではなく、 ダンス講師ができる程度にしてさしあげ ましょう。」 そう言ったクラウスは、その堅物な表情からは想像もつかないほどダンスの名手で、リードもとても上手だった。 クラウスは、25歳の頃から王女殿下にお仕えしているらしい。当時、王女殿下はまだ10歳だったそうだ。そして、王女殿下にダンスの手ほどきをしたのもクラウスなのだそう。 それから、13年が経ち、クラウスは現在38歳、王女殿下は23歳。 お年頃になられた王女殿下には、最近、近隣諸国の王子からいくつかの縁談が来ているそうなので、その縁談がまとまる前に、なんとしても目覚めていただきたい…というのが、クラウスの願いらしい。 それから1週間程度は、自室のみで生活をしていた私だったけれど、大広間のピアノを弾いてみたくなった。 ユリアに王女殿下のレッスン教本を見せてもらったけれど、残念ながら、9歳のエミーリエよりもさらに簡単な曲ばかり。 それでも、せっかくのピアノ。 簡単な曲でも弾いてみたい。 私はユリアを伴ってピアノの前に座った。 さすが王宮のピアノ。 調律は正確だし、音もよく響く。 初めはゆっくりと教本通りに演奏していた私も、徐々に楽しくなり、つい、装飾音符を増やして変奏を始めてしまった。 楽しい…… すると、ユリアの手が私の肩に置かれた。 見ると、ユリアが首を横に振っている。 はぁ……… 私は、演奏をやめて、ピアノの蓋を閉じた。
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