身代わり王女

8/9
前へ
/157ページ
次へ
「綺麗ねぇ。 ユリア、あの奥はどうなっているの?」 私は、美しい庭園の奥に、鬱蒼と木が生い茂り、森のようになっている一角を指差した。 「あちらは、王家所有の森でございます。 国王陛下が兎狩りや鹿狩りを楽しまれる こともございますが、手入れのために年に 数回、木こりが入るくらいで、ほとんど誰も 入ることはございません。 王女殿下も決して足を踏み入れませんよう、 お気をつけください。」 へぇ… でも、城から見てると、あの森から小鳥のさえずりは聞こえてくるようだったわ。 私は、森に入ってみたかったけれど、ユリアが反対するので、諦めて花壇や噴水のある庭園内を散策した。 その夜、久しぶりに外を歩いたせいか、気持ちよく、ぐっすりと眠ることができた。 翌朝、こんなにすっきりと目覚めるのは久しぶりだと思った。 「ねぇ、ユリア。 今日も午後から庭を散歩していい?」 私が、朝の身支度を手伝ってもらいながら、尋ねると、 「かしこまりました。 また、午後、こちらに参ります。」 と言ってくれた。 私はその日の午後も庭を散策して過ごした。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

437人が本棚に入れています
本棚に追加