クリスティアーネ

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 衛兵の守る大きな扉を通り、ロビーを抜けて案内されたのは、舞踏会の会場となる大広間。 その片隅に楽団の演奏スペースが設けられていて、すでに何人もの楽士が、楽器を手に譜読みや個人練習を始めていた。  急遽集められた楽師は30名。けれど、そのうち女性は私ただ1人。他は皆、一様に四十代以上のおじ様ばかりだった。  私は、老練なおじ様に混じって、楽器の準備をする。  それから程なく、見事な白髪の指揮者の指示のもと演奏の練習が始まった。  仮のコンツェルトマイスター(コンサートマスター)として、最年長のバイオリニストが楽団をまとめていく。  しかし午後になり、指揮者は、私を正式にコンツェルトマイステリン(コンサートミストレス)に指名した。 なぜ? 私が、コンツェルトマイステリンだなんて。 私のような小娘に指示をされるのは、皆さま納得がいかないのではないかしら。 不安を抱きながらも、指揮者の指示は絶対なので、私も皆もそれに従った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 〔作者注〕 コンツェルトマイスター コンサートマスターの事。 オーケストラをまとめる職。 第一バイオリンの首席奏者が務める。 コンツェルトマイステリン コンサートミストレスの事。 男性はコンサートマスター、 女性はコンサートミストレスと呼ぶ。
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