どんだけ好きなんだよ

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どんだけ好きなんだよ

どんだけ好きなんだよ、俺の事。って思う。 最近の、竜胆。 前はあんなにないがしろにしてくれてやがったのにさ。 『家帰ったら報告』 『何かあったら連絡』 『困ったら相談』 って……新入社員に〝ホウレンソウ〟教えてんじゃないんだから。 『これからはもっと夏川君に、優しくしようと思って』 優しく…?しつこく、の間違いじゃないか? とにかく俺が、気になるみたい。 下校中、隙を見て二回、キスしてきたその日。 『家帰ったぞ〜』 いつものように、ラインする。 (……あれ) いつもなら、玄関…階段…遅くとも、部屋に入る前に返信がくる。 今日は、 ベッドで寝っ転がろうが、母親に風呂を促されようが。 夕食時だって、ウンともスンとも。 俺の方が、気になってる。 『ご飯食べたぞー』 いつもはしない報告、してみる。 けれどまた、ウンスン。 (何だよ…アイツ) 時々思う。 〝竜胆が俺に興味を持たなくなったら、どうしよう〟って。 『好きです……』 言ってきたのはアイツだぞ?竜胆が、俺を好きだって言うから俺も…気になったんだ。 アイツがそれ言ってこなきゃ、俺だって。 真っ当な道を、歩んでいたはず。 結婚して子供ができて、家族の為に生きてーー 死んでく。 竜胆を、知らないまま。 「…ヤだよ…そんなん…」 ベッドに倒れ込んで、枕を抱いた。 竜胆が〝好きだ〟って言ってくれる事。 俺に触れて、口付けて、 抱き締めて、くれる事。 俺の…中に…入って、きて……くれる事。 考えただけで、体が…疼く。 そういえば、 (最近……してないな) されてない?って…一週間くらい……だけど。 ひょっとして、ホントに俺に…飽きちゃった、のか? 興味本位に近づいてきて、何となく食べて。 いざその味知ったらもう……食い飽きた、とか。 (…ふざけんなよ…っ) 元から自分勝手なヤツだとは思ってた。 そっちから告白しといて放ったらかしの、ないがしろ。いつも俺から近づいて、アイツは、 きっとアイツは、それを見て…楽しんで、たんだな…… (…ヤだ……ヤだよ…竜胆…) 思いのほか悲しくて、枕に顔を埋め込んで、泣いた。 竜胆の腕は、俺を…抱き締める為にあるんだ。 唇は、俺のそれを塞ぐ為。 手のひらは……俺を、俺の体を、まさぐって、 「…っん…」 考えただけで、熱くなる。 「……は…ぁ…っ」 自分の体を…竜胆がしてるみたいにして……触れてみる。 『夏川君…』 まるで耳元で囁かれてるみたい、 「っあ」 感じてしまった。俺は、 竜胆の想像だけで、いけるみたいだ。 竜胆なら何でも。何を、されても。ほっとかれても結局ーー好きみたいだ。いや、 好きなんだ。 「竜胆……」 早く触れて。抱き締めて。 酷くてもいいよ。けど、飽きないで。やめないで。俺を。 死ぬまでずっと、離さないでーー ピンポーン 玄関が鳴った。 「葉月ー、竜胆君ー」 「え!!」 母の声を疑う。 竜胆が?こんな時間?俺の家に?? 「そっち上がってもらうからー」 「いやっいやちょっと、待っーーっ」 こんな時にぃ?!俺、俺だって、 「夏川君っ」 部屋のドアが開く音に、俺は慌てて布団を頭から被った。 「夏川君…ごめん」 「…な、何が」 ベッドのすぐ横に座る気配がする。 「さっき別れたばっかなのに、また…会いたくなっちゃって…」 もう!どんだけ好きなんだよ!お前は! 学生の常識ある外出時間さえもお構いなしなくらい、 「…好きなの?俺の事」 「毎日言ってるじゃないか」 「飽きてない?…俺の事」 「そんな事あるもんか」 「本当?」 「本当」 「…だって……返事してこないし」 「…あ、携帯?ごめん……学校に忘れてきてさ」 「…え…」 なんだ……そっか。 「…良かった」 俺に飽きたんじゃなくて。 掛け布団にだけそっと、ニヤけ顔を晒す。 「ごめん、心配した?」 「べっ別に心配なんてーーっ」 「いつもは送ってこない〝ご飯食べたぞー〟…可愛かったけど」 「え?!」 俺は起き上がって、竜胆を見た。見ようとして…すぐさまどアップのその顔に、キスされる。 「んっ」 「携帯、学校取り帰って…それ見たら…会いたくなった」 ベッドのへりに座ってまた…口付けてくる。 「だからこんな時間……ごめんね」 いつもそう、竜胆って…急に優しい声で…優しい事、言ってくるから、 「…ううん」 ドキドキする。 下を向いて、首を振ったそのあごが捕まって…… 唇を…左から右へ、舐められる。 「!」 「ご飯は…ハンバーグかな?」 もう……大好き。 その胸に飛び込んで、 「ハッシュドビーフだよ…」 「惜しかったんじゃない?」 「…テイストは…まぁ…おんなじ、かな?」 唇の味だけでよくもまぁ、ニヤピン? 「じゃあ、布団…入ってもいい?」 〝じゃあ〟の意味はよく分からないけど、 「うん…」 返事も聞かないうちに、入ってきてるけど。 「あっでも!」 そうだ!忘れてた! 俺今……一人でヘンなコト、してたんだった! 「あ……お取り込み中だった?」 俺の剥き出しになったそれを見て、竜胆はすぐさま手を伸ばす。 「あっダメ!」 「何で…手伝うよ」 想像してた相手に本当に触られたら、 「っあ、ん!」 体が思った以上に反応してしまってーー 恥ずかしさ、この上ない。 「何…考えて、してるの?いつも」 「え…」 竜胆に触れられてる時いつも、俺は…頭がボワっとして…いつも… いつもの俺じゃ、なくなる。 「…意地悪…分かってるだろ…?」 言わなくたって。 「言って欲しいから…聞いてるんだけど」 スッとそこから手を離す竜胆にいつも、 「あ…やっ」 イラッとしながら…身悶える。 「竜胆…」 離れてく手をそこに引き戻し、触れさせる。 「さ…触ってよ……竜胆に…こう…して、もらう事…いつも……考えてる…から…」 恥ずかしいけどでも、竜胆が、 「良かった」 竜胆もこの上ない笑顔をするから、 「じゃあこれは、俺のものだね」 だから〝じゃあ〟ってーー ……もう、 「…そうだよ」 だから、 「早く…ぅ」 「腰…動いてるね」 「ん…だって…っ」 竜胆の手のひらに自分を、押し付けてるなんてーーみっともないけど、止められない。 …どんだけ好きなんだよ、俺。 竜胆の、事。 「…あっあっ、んっ!」 今日ヤバい。もう、すぐにでもいきそう。 「あ」 「ん?」 急にまた手を離す竜胆、 「やっ…やめんなよ…!」 もういい加減、怒るぞ。 「もったいないから、全部していい?」 「……」 怒りを通り越して一瞬、いきそうになった。 深く長い息を吐いて俺は、 「…いいけど先一回…いかせて…?」 お願いだから。 懇願する俺に口付けて、竜胆は冷酷な笑顔で、 「やだ。もったいない」 「何がだよ?!」 苛立って叩くベッドのスプリングが強固なものだと知った腕は…何バウンドかして、竜胆の首に回された。 「…一緒にいくチャンスが、一回減る」 冗談でもなく言うその顔に、 「…竜胆…」 怒りを通り越して一瞬、キュンとなる。のは俺…間違ってるか? 抱き締めて、その愛しい背中を引き寄せた。 「…な…何回でも……すれば、いいだろ…?」 もうアルファベットがどこまで進んだかも覚えてない俺らは、きっと、 これからもっと、いっぱいする。 「…いいの?何回でも、しちゃうよ?」 「…いいよ。もう…」 もう、 どんだけ好きなんだよ、俺たち。
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