第2話

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 ─と、声を発したのは俺…ではなく佳子だった。 俺は呆然として数秒の空白をつくってから、 「言いたかったなあ!」 と声を上げた。 「先輩がつまらない突っ込みをしただけでギャラは増えないよ」 と、そんな変な会話をひとしきりやった後、俺は何かを忘れているような気がして思考を巡らせる。そして気づいて頭をかいた。 「あ、そうだ。」 「何?先輩。」 「未来登校してきてないけど何か分かるか?」 すると佳子は、少し考えてから首を傾げて言う。 「うーん…特に変わったことはなかったよ?風邪を引いてる様子も無かったみたいだし、でもあまり今日は話せてないから分かんないや。まあ、あの人のことだから失踪するなんてことはないと思うけど」 「いや、それは流石に無いだろ」 大山の妹が知らないのなら仕方がない。拡は諦めてため息をつく。 と、ここで予鈴が鳴った。 「あ、まずい。」 1限目の体育科教師は怖い事で有名なのだ。 そこで俺が遅れるとクラス全員が遅れることになるので、そうなると下手したら1時間説教かロード50周だ。 「わりぃ、急がなきゃ。お前も早く戻れよ。でないと怒られるぞ」 「いや、私は急がなくていいんだ」 急がなくていいという発言に少し違和感を覚えたが、先生に何か頼み事でもされたのだろうか。まあいい、今はそれよりも鍵を取りに行くことが最優先だ。 俺は駆け足で佳子と別れると、エスカレーターまで移動する。 「い゛っ!?」 予測不能な事態が起こっていた。 エスカレーターの前には、“只今故障中。階段を使って下さい。”の文字が。 「ついてねえ!」 俺は泣く泣く階段を駆け上がる。…やっと5階だ。俺は切らした息を整えてから再び施錠管理室まで走る。 さて、ここで何かに気づいた人、正解。 先程(俺たちは)鍵当番なので、と言った。そう、本来なら悠太もここで一緒に施錠管理室に向かって走っているはずなのだ。これには諸事情がある。 遡ること5分前ー。
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