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「ハア…今日鍵当番かよ…」
俺は教室でため息混じりに言う。それに対して悠太は何かわくわくしている様子だ。
「え?そっかあ、拡鍵当番?ガンバ」
……………………………………………え?
予想外だった。俺に対してそう返してくるとは思ってもみなかった。本当の『皆無』だ。
悠太のせいで鍵当番になってるのだから。それにわくわくしている悠太のことだから、鍵を取りに行ってる間はサボれるやったー。などと考えているのかと思ったのだ。すると悠太は俺の心を悟ったように言った。
「何?拡、俺がサボりたいと考えているのではと思った?そりゃないよ。だって早く体育館に行けば行くほど、お着替えシーンをみる時間が長くなる!」
「最初からそれが目的だったのかよ」
悠太らしいと言えばらしい。が、それとこれとは話が別だ。それに遅刻したのは悠太のせいだ。鍵当番は今日だけだし、今日くらい見られなくたっていいのに。
「拡も見たいの?」
俺は一瞬たじろぐ。見たいかと言われれば大いに見たい気持ちもある。まあ一応思春期だし…?だがここで自分の欲望に負けてはいけない。俺は心を鬼にして言う。
「一緒に覗くのはお断りだ。例え空からペンギンが落ちてきてもこの答えは覆さないぞ」
どんな例えだよ、と自分でも思った。悠太は明るく、そっかあと言ってから、
「じゃあ拡よろしく」
と言った。よろしくさせられてしまった。
「ちょ、待っ!だからお前のせいで!」
悠太はなおも嬉しそうにしたまま体育館の方向に走って行った。厳密に言うと体育館の女子更衣室へ。
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